夢中

テレビで、鹿児島の福祉施設「しょうぶ学園」の人たちの作品を見た。

4年をかけて重厚な刺繡がほどこされたシャツは
糸の重みで片袖が抜けている。
これを創った作家は幼い頃から
自分で決めた規則的な色彩の配列に従った絵を描いていた。
シャツ全体を埋め尽くすように刺されたリズミカルな色。

ある作家は、自分の作品を「ネコ」と呼ぶ。
布に色とりどりの糸を刺しては小さくくるみ、また刺し、を繰り返す。
時にビーズなどを加えながら、それをさらに布や糸でくるんでしまう。
幾重にも包まれた小さなお守りのようなかたまり。
そこからはみ出す鮮やかな色彩の渦が美しい。

「玉止め」にこだわる作家は。
淡い色糸に無数の小さな玉止めを結んでいる。
それは無限に増殖し続け、どこで完成となるのか見当もつかない。
繊細な玉止め糸に縫いとめられた薄い布きれが、
大海原に浮かぶ小舟のように、部屋いっぱいに広がってゆく。


私はこの番組を途中から見て、釘付けになってしまった。
彼らは一日中、自分の世界に夢中になっている。
ただひたすら表現している。圧倒された。

私たちの日常は「すべきこと」に溢れている。
「やりたい」より、「しなくちゃいけない」ことのほうが優先されている。
もちろん、家族や社会のために力を出すことはいいことのはずだが
ほんとうに無心になって自分自身のためだけに
生きている瞬間がどれほどあるだろう。

彼らの作品を見ながら
私は懐かしさのような熱い気持ちでいっぱいになった。
あそこに帰りたい。
たぶん、ごく幼いころには私もそうだった。
自分のしていることに意味など見つけようとしないで。
作品にするための意図も努力もなく
ただ内側から湧き出てくるものに夢中になっていたはずだから。


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色とりどりのボロを織り込んでいるとき
こころが浮き立つ。
作品を仕上げることは実は結果でしかなくて。
ただ、今、こうして織っていること、この色、この色、と
積み上がってゆくものの中に自分がすっぽり入っていることが嬉しい。

こんな時間を、もっともっとたくさん持とうと思う。
私にとってものをつくったり絵を描いたりすることは
何より自分自身になれる時間なのだから。




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Commented by fusk-en25 at 2018-01-09 03:09
私も「しょうぶ学園」の縫い物はすごいと思いました。
真似しようと思えるぐらいの自由な発想。
こう言う風に縫ってもいいんだ。。って。目から鱗。

私自身も出来上がったものより、作っている過程の方が好きなんだと思います。
それが料理になっても、作るのが好き以前の、どうしたらこうなるのか?
どんなものができるのか?に興味津々。
食べる方は実は毎日同じものをかじっていても平気。
何しろ中学3年間の弁当のおかずは卵とキャベツとマッシュポテトだったのですから。
(今はどんなものでも興味を持って食べますが。その頃は偏食でそれしか食べない。笑。)
美食家からはほど遠いなあといつも思います。
だから写真のないレシピの本が好きです。

それにしてもこのボロの集成。なーんて素敵なんだろう。
ハルさんが夢中になるはず。
Commented by PochiPochi-2-s at 2018-01-09 08:53
おはようございます。

〉色とりどりのボロを織り込んでいるとき
こころが浮き立つ。
作品を仕上げることは実は結果でしかなくて。
ただ、今、こうして織っていること、この色、この色、と
積み上がってゆくものの中に自分がすっぽり入っていることが嬉しい

一心不乱に何かに向かっている時ってそうなんですよね。
今していることが楽しい。そのことに入り込める。
結果は考えない。
そうなんだなぁと同じ思いです。

きれいだなぁ〜!
“気持ち”を感じます。
絵の帰りデパートで見た機織りのデモンストレーションを
再び思い出しました…
Commented at 2018-01-09 18:13
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kotoko_s at 2018-01-09 21:01
☆fuskさん
しょうぶ学園の縫い物、ご存知でしたか。
ほんとに凄いですね、もうドキドキしながら見ました。
いつか実物を見たい、触れたいと思います。

>食べる方は実は毎日同じものをかじっていても平気。

そうなんですか、私とおんなじじゃないですか^^
私は特に偏食ではなかったのですが、気に入るとそれだけ食べ続けるという傾向が昔からありました。
それは食べ物に限ったことではなくて、何かこう全体のバランスというものに欠けるのです^^;
昔、朝から晩までほとんど一人でものづくりに没頭できた時期がありました。
その頃はおにぎりをたくさん作っておいて、あとはずうっと制作していて。
友人が心配して色々料理して届けてくれました。
しょうぶ学園の人たちを見ながら、ちょっとあの頃のことを思い出していました。

ボロの集成、素敵ですか?嬉しいなあ、ありがとうございます♪
Commented by kotoko_s at 2018-01-09 21:14
☆PochiPochiさん
こんばんは。
当然のことながら「生活」をやっていかなくてはならないので、なおのこと、ただひたすら自分の世界に向き合う時間に憧れるのかもしれませんね。
私は都会からこちらへ来て、自分がしたかったことはこういうことだったんだと、初めてすとんと胸に落ちるものを感じました。
作りたいものがあるからというより、表現せずにはいられない何かがものをつくらせてくれるという気持ちです。
自然の中で暮らすことは想像力も育ててくれますね。

きれいとおっしゃってくださってありがとうございます。嬉しいです♪
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-09 21:15
いいなあ、すてきだなあ。
Commented by kotoko_s at 2018-01-09 21:26
☆鍵コメさん
番組、ご覧になりましたか!素晴らしかったですね。
そうでしたか、そんな貴重な体験をなさったのですね。
私も昔、社会に適応し難い人たち(私もそうでした)と、一緒に織物を楽しんだことがあります。
私のものづくりの方向はその時に明確になったと思っています。
それまでもあれこれと楽しんではきましたが、いずれも「私自身」から離れてしまって。
私たちはどうしても他者の目を意識せずに生きられないですね。
でもしょうぶ学園の人たちの作品を見て、勇気百倍の気持ちになりました^^
私の模様、素敵ですか~ありがとうございます♪
Commented by kotoko_s at 2018-01-09 21:28
☆佐平次さん
ありがとうございます(^-^*)/
Commented by jarippe at 2018-01-10 06:45
我を忘れてすることがあるって
とっても素敵な素晴らしいことですね
女はとかくあれこれ気を廻したり自分を追い込んでしまうけれど
そうではなくて
夢中になれることの方がどれだけ大切かって思います
そんなものをお持ちのkotoko_sさんとっても素敵です
Commented by kotoko_s at 2018-01-10 10:29
☆jarippeさん
そうですね。女性の特質なのか、幼いころからのしつけの中で刷り込まれたのか、とかく「我慢」する癖がついてしまったのでしょうか。
好きなことに夢中になっている人は、周りを明るくしますね。
自分の機嫌をよくするのはほかでもない、自分自身なんだと、つい不平が口をついて出そうになるたび思います。
元気の出ないときなど、好きなことすら楽しめなくこともありますけれど、時間がかかっても必ずまたここに戻ってくる、という感じです。
手で何かすることって心につながっているのでしょうね。
ありがとうございます♪
Commented by hanamomo08 at 2018-01-12 09:19
おはようございます。
この織物は写真を見てもいい風合いだってわかりますね。
何度も何度も水を通った働き者だった布が裂かれて、織られてこんな色になって、もうこれは芸術品です。
しょうぶ学園の番組私も見ました。
その凝り様に驚きました。
彼らの中に潜む力に圧倒されそうでした。

たくさん頂いたカレンダーの中の傑作、山下清の貼り絵のカレンダー。
あの緻密さに驚かされるばかりです。
Commented by kotoko_s at 2018-01-13 07:54
☆momoさん
おはようございます。
今朝は今冬最高の冷え込みで、水が出なかったり、窓ガラスが鍾乳洞みたいだったり。
でも早朝の月がとてもきれいでした。

裂き織、ご覧くださってありがとうございます。ひとえに素材のもつ力だと思います。
殆どが義母の手縫いの野良着や着物、布団がわで、今はこんな手触りの木綿地はないなあと思いながら。
貧しさもありましたし、今よりはるかに布地を大切にしていましたね。
これの前に織ったものはもっとシンプルだったのですが、なにか裂き織の原点に戻りたい気持ちが強くなって、今回は楽しく織っています。

しょうぶ学園の番組、momoさんもご覧になりましたか。
もう身を乗り出して見入ってしまいました。
あのエネルギーは本当に圧倒されますね。

山下清のカレンダー、いいですねえ。
会津に来たことがあるらしく、先日、あのまんまの格好だったよ、と聞いたばかりでした。
彼の作品も大好きです^^
Commented by sheri-sheri at 2018-01-17 22:48
今晩は。kotokoさん。菖蒲学園の放送は、見過ごしてしまいましたが、以前よく通っていました。あの園長先生のお考えが素晴らしく、学園内には色々な工房や学びつつ働く場もあります。初めて伺ったのはもう10数年くらい前でしょうか。パンを焼く人、接客をする人。ご覧になった創作に没頭する人様々です。そしてものを作り続ける人たちの何にも影響を受けていない無垢のままの感性。そこから生まれ出る作品。情熱。圧倒されます。是非一度、機会があればご覧になるとまた感動なさると思います。中には、カフェのようなレストランのようなところもありとても素敵な気がみちています。
Commented by kotoko_s at 2018-01-18 13:58
☆sheri-sheriさん
こんにちは。おいでくださってありがとうございます。
そうでしたか、しょうぶ学園をご存知だったのですね。
テレビのあと、ホームページで縫い物のほかにも色々な創作活動をしていることを知りました。
たしか、テレビに出ていらしたのは園長先生だったと思います。
いつか行ってみたいと思うところがいくつもあったのですが、今はこのしょうぶ学園が一番行きたい場所になりました。
実際に足を運んで、様々な作品を見たり、創作に没頭する人たちと会えたらいいなあと夢見ています。
Commented at 2018-01-21 15:32
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kotoko_s at 2018-01-22 22:40
☆鍵コメさん
鍵コメさんに触れられた古い道具類は幸せだなあと思います。
私もいとおしくて手放せない、自分では使えない道具がありますよ。
しかし。馬の草鞋なんて、持っていてどうするつもりなんだ、って思いますけど^^
屋根裏に上げたまんまだった高機や糸車はみんな古道具屋に売った、なんて話を聞くと、自分では使えないのに、ああ惜しい!と思ったり。

妥協したがる人たちとの仕事はストレスが溜まるだろうなあ^^;
でも、きっと鍵コメさんらしい道を進まれるのでしょうね!
ありがとう、私も雪にめげずふんばります^^
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by kotoko_s | 2018-01-08 22:33 | 作る | Comments(16)

奥会津に暮らす


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