まど・みちおさんのこと

c0323384_23334311.jpg


まど・みちお全詩集(伊藤英治・編 理論社 2002年5月新訂版第3刷)の
『あとがきにかえて』に
この本に掲載された2篇の「戦争協力詩」について、まど・みちおさんの言葉がある。
そういった詩を書いた記憶が全くなかった詩人は、それをひとから知らされて
『まぎれもない拙作で、大ショックでした』とし、


『しかし考えてみますと、私はもともと無知でぐうたらで、時流に流されやすい弱い人間です。こういうものを書いていても不思議でないと思われてきました。が、にもかかわらず私は戦前から、人間にかぎらず生き物のいのちは、何ものにも優先して守られなくてはならないと考えていました。戦後も、戦争への反省どころかひどい迷惑をかけた近隣諸国に、お詫びも償いもしない政府のやり方に腹を立てつづけてきました。』


『一方で戦争協力詩を書いていながら、臆面もなくその反対の精神活動をしているわけです。これは私に戦争協力詩を書いたという意識がまるでなかったからですが、それは同時にすべてのことを本気でなく、上の空でやっている証拠になりますし、またそこには自分には大甘でひとさまにだけ厳しいという腐った心根も丸見えです。そしてとにかく戦争協力詩を書いたという厳然たる事実だけは動かせません。』


『慙愧にたえません、言葉もありません、と私は私の中のはるかなところから、母のように私に注がれている視線に掌を合わせて、心を落ちつけました』


『なぜ私が戦争協力詩を書いたのか、またそれがなぜ記憶になかったのか』を
まど・みちおさんは考える。
そして、この「まど・みちお全詩集」にその2編を入れることを決めたのだ。


過ちはなかったことにしたいのが人の常だ。
当時、こういった作品を書いたり描いたりした作家は大勢いた。
私たちがそれを批判し、責めることは簡単だが。
なかったことにしたいはずのことをあえて明らかにした、こういう作家がいたことに驚く。
有難いと思う。



名前
URL
削除用パスワード
by kotoko_s | 2015-08-16 23:52 | 読む | Comments(0)

奥会津に暮らす


by haru
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31