夏休み

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ついにエアコンを付けてしまった。
炎熱地獄の東京にいたときでさえ、扇風機とうちわでしのいでいたのに
ここにきてこんなことになるとは、といささか不満である。
育った環境にそういう便利なものが乏しかったためか
いまだに快適すぎることにわずかながらうしろめたさがある。
でも昨年の今日、義母が熱中症で救急車のお世話になって、もう無理だと思ったし
今年のこの連日体温並みの暑さにはヨメがまず参ってしまいました。
というわけで、6人のイキのいい兄ちゃんたちがノンストップで3時間、
ボロ家にピカピカのエアコンを3台(とはいかにも贅沢だが)設置し
滝の汗で引き揚げていった。


ああ、エアコンってなんて素敵なんでしょう!
真夏に初めて、裂き織用の布を裂くことができました。


               *


最近読んだ本を並べてみた。半分は再読。
でもどれも新鮮なのは、すっかり、と言っていいくらい忘れているからです。


昔、図書館司書をやっている友人が送ってくれた「さくらんぼの性は」が好きだった。
ジャネット・ウィンターソンをもっと読みたいと思ったはずが
それきり忘れていたことを思い出して
「オレンジだけが果物じゃない」「灯台守の話」を古本で買った。
「オレンジ……」もやっぱり面白かった。聖書を知っているといっそう楽しめる。
が、物語は楽しいというより、胸を掴まれるようなせつなさに満ちている。
この作家の生い立ちが強烈だ。
イギリス・マンチェスターで生まれたジャネット・ウィンターソンは孤児だった。
カルト的なキリスト教一派の熱烈な信者である養父母に引き取られる。
説教師となるべく特殊な教育を受けて育つが
15歳で女性と恋愛し教会からも家からも追われる。
以後、様々な職を転々としながら生計を立て
独学でオクスフォード大学に入学した。
「オレンジ……」には、作家自身の物語がこめられている。

「灯台守の話」は読みはじめたばかり。
またまた風変わりでどこへ連れていかれるのか、わくわくする。
しばらく随筆のような短いものしか読んでこなかったので
久しぶりに物語世界に没入できてうれしい。


この3冊の翻訳は岸本佐知子だが、私はこの人の訳が好きである。
少し前の「暮らしの手帖」に思い出の絵本という特集があって
岸本さんが選んだのは「海のおばけオーリー」だった。
うろ覚えで失礼だが、人とうまく馴染めずハードな幼稚園時代を過ごしたので
弱い子が努力して成長する物語は苦手だった、というようなことが書かれてあった。
「海のおばけオーリー」は教条的なところがない。あの暗い絵も好きだった。

翻訳家も、作家の気質というか根っこの部分に触れられる人だと
いい翻訳になるんだろうなと、日本語しかわからない私が思うのは生意気だけれども。




ドキュメンタリー映画「アラヤシキの住人たち」を観た。
「ナージャの村」「アレクセイと泉」の本橋成一監督の新しい作品だ。
信州の小谷村で共同生活を営む『協働学舎』の日常を坦々と映しているのだが
観ているうちに泣けてきてしまって、終わったあといつまでも爽やかな余韻があった。
経済や効率優先の社会ではうまく生きられない人たちが
そこでは自分自身を生きている。

アラヤシキ(新屋敷)は茅葺の家の呼称だが、仏教用語の『阿頼耶識』も思い浮かぶ。
雪深く厳しい暮らしだが、人と人の間に上下も優劣もない。
「世界はたくさん、人類はみな他人」とパンフレットにあった。
「世界はひとつ、人類みな兄弟」ではなく。
一人ひとりの世界。他人同士であるからこその、清々しさ。


               
               *



今朝、89歳の義母とじゃがいも掘りをした。
この老人を「妖怪・畑オババ」と私はひそかに呼んでいる。
畑オババは妖怪なので、人間には余計な色目などくれず、野菜語しか喋らない。
好きなことにまっしぐら、ひたむきでカッコイイ。
一緒にいる人間は少々難儀ではある。私も早く妖怪になりたい。

いつのまにか、薄の穂が金色に波打っている。
もうじきお盆。それが過ぎれば景色は次の季節へとどんどん変わっていく。

それまでもうしばらく、夏休み。


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by kotoko_s | 2015-08-02 13:04 | 読む

奥会津に暮らす


by haru
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