足跡

某所で一日、パソコン入力の作業をする。
いまや原稿用紙に鉛筆で書かれた原稿というのも、珍しくなったのではないか。
走り書きのような薄い鉛筆文字なので、なかなか捗らない。今日で3日目。夕方近くには終わり、ほっとした。

どんな小さなことだって、そこに一生懸命取り組んでいるのだから、立派な仕事だ。
必要とされているんだと思う。
なのに、時々、くたびれる。
度々しているテープ起こしや入力の作業は、自分の学びになる、誰かの役に立つという理由で続けてきたけれども。
もしかしたら、自分は便利やさんになってしまったのではないか。

嫌な考え方だなと思う。
自分が軽んじられているように感じると、誰でも腹が立つものだろう。
見返りを求めずに始めた頃の気持を思い出してみる。
あの頃とは、見ている方向が変わってきたのかと思う。
なんとなく、さびしいような、つまらないような気持で帰った。

一日中、雪だった。時折吹雪いて真っ白になる。
啓蟄だというのに、どこからも何も這い出してこられないような寒い日。
2階の窓を開けると、頬を刺す空気が流れこむ。
裏の黒々とした森がざわめいて、色のない空を突き上げるように揺れている。
その足元の暗闇から、ちいさな足跡が雪原の上に続いていた。
まっすぐ来たところで曲がったり、一箇所でぐるぐる回ったような跡も見える。
何を見つけたんだろう。
キツネか、イタチか、野ウサギか。
足跡は吹きすさぶ雪にかき消されながら、雪が小やみになるとまた現れる。

なんということもない、このあたりではよく見る風景だが。
今日はしばらく目を凝らしていた。
私も過去の足跡をこんなふうに俯瞰して眺めてみたくなった。
それは、今、ここまで続いているはずなのだ。無駄だったことはひとつもない。

でも、そろそろ方向を変えてもいいかもしれない。



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by kotoko_s | 2014-03-06 23:59 | ある日 | Comments(0)

奥会津に暮らす


by haru
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