襤褸を縫う

「ボロのボロ隠し」を作り始めた。
ボロ―襤褸は尊いと思っている。しかも、私の手元にあるのは家族の歴史を背負ったボロである。

以前、炬燵掛けにするつもりで初めて作ってみた。小さい布を手縫いでつないでいく。なかなか手間のかかるもので、仕上がる前に春になってしまった。炬燵に掛けられるほどの大きさではないが、雑多なものを詰め込んであるカラーボックスの前に垂らしてみると、これがなんと、素晴らしい。自画自賛しつつ、それを眺めるたびに嬉しくなってしまう。
だから「ボロで作ったボロ隠し」というわけだ。

このボロ、ほとんどが古い会津木綿である。どこの織元で織られたものかわからないが、今では見られなくなった柄も多い。この様々な縞模様に、藍や臙脂、山吹色などの無地をところどころ入れてパッチワークする。今度こそ、炬燵掛けの大きさにまでつないでみたいと思う。

型紙に沿って布を裁ち、並べる。ここはこの縞、隣りは無地の藍、上にはこれ、と色柄を合わせる時間が楽しい。2枚を縫い合わせ、それを二組作ってつなげ、そこにまた足して。少しずつ大きくなっていく。ちくちくちくちく。大小様々な四角を11枚つないで、一辺が30センチの『基本』がひと組できた。今日の仕事はここまで。

使うのが作品のために買ってきた布ではなく、縁あって家族となったひとたちの着古された布の端切れであることが、私にはもっとも意味あることだ。
ちくちくちくちく。こころ安らぐ。
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# by kotoko_s | 2014-01-12 15:53 | 作る | Comments(0)

ひとりの時間

家族が出かけたので、一日、ひとりだった。
手仕事をしようと思っていたのに、ふと思いついたことを始めたらやめられなくなってしまい、単純な作業に貴重な時間を費やした。あっという間に家族の帰宅時間になってしまった。
夕飯の支度をしながら、ああ、ひとりだったらなあ、と思う。ひとり暮らしだったら、時間は私の自由だ。

「ひとり」と書いたら、茨木のり子さんのことが浮かんだ。
夫が亡くなったあと、31年近く、ひとりで暮らした。あの『自分の感受性くらい』はその頃、50歳で書かれた作品だという。50歳をとうに過ぎた私は、詩人が若くしてひとりになったことを改めて思う。
いまの50代とはまったく異なる時代を生きた人だ。少女時代は戦争の最中だった。

「清冽―詩人茨木のり子の肖像」(後藤正治著)に、夫を亡くし数年後に書かれたことばが紹介されている。

『そして皮肉にも、戦後あれほど論議されながら一向に腑に落ちなかった<自由>の意味が、やっと今、からだで解るようになった。なんということはない「寂寥だけが道づれ」の日々が自由ということだった。
この自由をなんとか使いこなしてゆきたいと思っている』

伴侶がいなくなる。
そこから先のことを、最近しばしば考えるようになった。
夫の親を送り、自分の親を送り、夫を送って、最後に残るのは自分だと私は信じている。そうでありますように、と願っている。夫をひとり残すなんて可哀想だと思っている。昨日は「なんて思いやりのないトーチャンだ」と怒っていたのにね。

家族は、うっとうしいものだ。重くて面倒くさくて堪らなくなることがある。
いや。常に重くて面倒くさい。

それでも、家族がいてくれて有り難いと、今は思う。
ひとりになったとき、私は自分自身を保つことができるだろうか。


清冽―詩人茨木のり子の肖像

後藤 正治 / 中央公論新社


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# by kotoko_s | 2014-01-11 20:46 | 読む | Comments(0)

若さ

お世話になった方から封書が届いた。手紙と、写真が数枚。
昨年の秋、20年ぶりに仲間たちと集まったときのものだ。
「あの時はみなさんに会えて本当に嬉しかった」と心からの言葉が綴られていて、温かい気持になった。

写真には、それぞれに20年の歳月を感じさせる姿に変貌した友人たちと私がいた。
長いこと会わなかったにもかかわらず、ひとたび会った瞬間、当時の調子に戻るのは、同じ時間をわかちあった間柄ならではだ。

そのときの嬉しさがよみがえり、写真を夫に見せた。すると
「まともなのは○○さんだけじゃないか」
○○さんとは、その中でもっとも若い女性である。
ほかは私と同い年か、ほぼ同じ。顔も姿も、歳相応だ。
夫に唯一まともと認められた○○さんは、我々より15も若い。
それにしても。ひとの容姿を見て「まとも」とかそうでないとか、あんまりじゃないか。
懐かしさに頬もゆるみっ放しだったのが、夫のひとことで、さあっと冷めてしまった。

たしかに、○○さんは整った顔立ちだし、背も高くすらりとしてかっこいい。
要は「きれい」ということだ。
表現力の乏しい夫の言いたかったこととは、こうだろう。
顔も身体も余分なものがなく、ぴんと締まってイキがいい、つまり「若い」ということ。

若い友人に比べ「まともじゃない」と夫に評されたことに
自分でも意外なほど私は傷ついた。
妻への褒め言葉をいざという時にはひとつぐらいポンと出せる、ささやかな気遣いというものが、このひとにはないのか。
そもそも、夫は女性の容姿についてあれこれ言い過ぎる。
夫はいつも私を褒める。褒めてくれるのは、家庭内のことである。よくやってる、大変だな。
その労いの言葉は嬉しいけれども……時折、さびしいなと思う。
妻や嫁としてではなく、「女性」の私を見てほしくて。

外見より内面、というのはよく言われることだが、身体と心は呼応している。
腰が曲がっても、ガニ股になっても、耳が遠くなっても、寝たきりでも
きれいなおばあちゃんは、いる。
きれいなおばあさんは、どんな姿であってもきれいなのだ。

きれいなひと、とは、たとえばこんなひとだ。
衰えてゆくことを嘆かず、ひとを羨まず、ユーモアを忘れず。
そんな老人に、私は育っていきたい。
最期まで成長したいと願って進んでいくのが「若さ」なのだと思う。

私は私の美しさを大切に磨いていきたい。夫よ、びっくりするなよ。


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# by kotoko_s | 2014-01-10 20:15 | ある日 | Comments(0)

ケモノたちの気配

午前中は家族の病院つきそいで隣町まで出かける。道に雪がなく、少し気温が上がっているのだろう、凍ってもいない。こんなに楽な冬は珍しい。

早めに帰ると雪が降り出した。雪原の下は田畑や牧草地。雪に覆われると境目が消え、どこまでも真っ白な平野になる。
そのあちこちに、獣の足跡が見える。雪の割れ目から暗い水を覗き込むように、縁を歩く小さな足跡。ぐるりと回ってもとに戻った足跡。ふと立ちどまり、その先が見えないのは雪に消されはじめたのだろう。雪原の真ん中を一直線に横切り、杉の森の麓に辿り着いて、そこでかっきりと曲がり森に沿って進んでいる大きな足跡。
みんな、誰?
寒の入りの朝、玄関を開けると目の前に野ウサギの足跡がついていた。隣の家との境にそびえる雪山を越え、我が家の前に下りてそのまま裏へと走り、遠く雪原に消えていた。
山の獣たちと私は、共にこの冬を生きている。

午後、細かい雪になった。音が消える。
こういう雪を、ここでは「黙ぁって降ってる」と言う。積もる雪だ。
家族が仕事から帰る前に、カンジキを履いて道を踏む。踏む音も聞こえない。
明日の朝はどれほど積もっているだろう。
夜中に活動する動物たちの、新しい足跡が見られたら嬉しい。
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# by kotoko_s | 2014-01-09 20:49 | ある日 | Comments(0)

身体の声

「今日のこと。」と掲げながら、昨日のことを書いている。今日は9日。

昨日はちょっと足を延ばして買物に出かけた。家族に頼まれたものを買い、ついでに自分のものもすこし。
お昼に入った店は久しぶりだった。音楽も耳に障らず、ドリンクバーでコーヒーをおかわりしながらゆっくり本を読める、このあたりではほかにこういう店がない。但し、ここで食べると、きまってあとで胃もたれする。ということを忘れていた。案の定。

夕食のとき、もうなんともないような気がして、ちょっと脂肪のあるものを食べた。その後、気分がよろしくない。
お風呂に入る元気もなく、顔だけ洗って布団にもぐりこむ。眠れない。どっちを向いてもおなかが変だ。こうなるとどんどん心配になってくる。
年に一度は、吐き下しという恐ろしい症状に見舞われる。あれがくるともう、夜通し七転八倒だ。たいてい、冬の寒い時期に襲われる。
あれがきたか。

そこまではいかず、昨夜はなんとか朝まで眠れた。今朝はおかゆに梅干2個、大根おろし。魚はやめておいた。

一日のことや思ったことを、その日のうちに書こう、というのがここを始めるにあたって決めたことだった。でも、無理はよそう。
パソコンに向かうのは仕事優先、あとは余力があったら、ということにしよう。
夜は11時半には床に入ります。

身体の声を聞くということが、若い頃から下手だった。倒れるまでやってしまう。
でもそれは、それだけ体力があったからできたこと。これからは健康を一番にしなくては。倒れたらその先がない。せっかく授かった宝ものを活かさないまま、今生が終わってしまう。それでは申し訳ないではないか。
痛みや苦しみがあるということは、身体がそれこそ「身を以って」魂の声を伝えてくれているということなのだから。
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# by kotoko_s | 2014-01-08 16:26 | ある日 | Comments(0)

 あれこれ


by haru
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