たいしたことではない

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先日、インターネットで古本を何冊か注文したら、一冊が汚れていた。
「表紙に少しシミあり」という説明も承知の上だったが
これを「少し」といいますか、と言いたくなるような濃いシミ。
イヤな気持ちになりすぐさまきれいな包み紙でカバーしてしまった。
中を開くと数ページ目に、ルビが書き込まれている。しかも赤いボールペンで。
そういえば、書き込みナシ、とは書いてなかったなあと後悔したが仕方ない。
せめて鉛筆にしてほしかったが、それよりも吃驚したのはそのルビが間違っていたことだ。

「詠って」というところに「よむ」とふってある。
「って」はどうするの。
「うた」だよ、きっと、この場合は。
「よむって」と読んだのかなあ、まさかなあ。
辞書で調べて「よむ」と読むんだね、と知ってメモしたのか。
ぶっきらぼうな赤いボールペンのひらがなが
この本の最初の読者を想像させてちょっと可笑しくなった。

私だってたまたまこの字を知っていたというだけで
ほかの何万という言葉を知らずに平気な顔して生きているのだ。
表に出ない分、恥をかく機会がないというだけである。
あ、ここでやっているかもしれないですね。



午後の朴の木。田中一村の絵を思い出した。
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雑誌の編集をしている友人が、取材した人物の名前を間違えたまま載せてしまった。
人名というのは校正でも特に緊張する部分ではなかろうか。
それでもこういうことはあるのだ。
友人は真っ青になってすぐさま電話をかけ平謝りに謝った。
すると相手はこともなげに言ったそうだ。
「私はそういうことはまるで気にならないんですよ。だからあなたも気にしないで大丈夫」

申し訳なくて恥ずかしくてありがたくて、と友人は涙ぐんで言った。
似たようなことを経験しているから、その気持ちはよくわかる。
それなのに、自分の至らなさを忘れて私は結構、他人に厳しい。
相手の勘違いをいつまでも覚えていたり。いやらしいよなあ、と恥ずかしくなった。
たいていの間違いはたいしたことではないのだ。

名前を間違えられても「まるで気にならないんですよ」とさらりと言って
恐縮している相手を救う。
そんなおおらかな心持ちに私もなりたい、と思ったことでした。




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Commented by saheizi-inokori at 2017-06-14 21:45
なかなかできないことですね、私には。
若い頃に人に厳しくしたことをいくつも思いだして辛い日々です。
まあ、しょうがねえやと開き直りつつあるのですが。
Commented by kotoko_s at 2017-06-14 22:33
☆佐平次さん
最近、ふっと気づいたのです。
私がずっとこだわってきたあるジャンルへの厳しさ、「かくあらねばならぬ」は、誰よりも自分自身を苦しめていたことに。
それを教えてくださったのが、この「まるで気にならないんですよ」の人であり、身近にいていつも許してくださっている誰彼でありました。

佐平次さんの厳しさはきっと、温かさ、愛情でしょう、と、若輩の生意気は思えてなりません。
Commented by jarippe at 2017-06-15 20:20
田中一村って 奄美大島に関係ある方?
ちょっと思い出しました
Commented by kotoko_s at 2017-06-15 21:08
☆jarippeさん
そうです、奄美大島で絵を描いた画家です。
奥会津とは関係ないのですが。
陰影の美しいホオノキの写真を見ていたら、なんとなく彼の作品を思い出しました。
Commented by PochiPochi-2-s at 2017-06-15 23:54
こんばんは。
なかなか心の広い、懐の深い人ですね。
生まれ持った性格にもよるのかなぁとも思うのですが…
許容範囲は人それぞれ異なるので、難しいですね。

朴の花。
最近描いたところです。
葉っぱを塗るのが大変でした…
Commented by kotoko_s at 2017-06-16 05:20
☆ PochiPochiさん
おはようございます。
この人も心の中では何を思ったか、それはわからないですよね。
もしかしたら、若い編集者がもうどうしたらいいのかわからないほどに恐縮していることに対して、それ以上責めない、という態度を選んだのではないかと私は思ったのです。
もう十分、ほかでも叱られているはずだし、反省しているのだから、と。
そんな大人になりたいなあと、この話を聞いて思いました。

朴の木は花も葉も見事で美しくて、私もいつも心惹かれます。
でも実際にちゃんと描こうとしたら大変でしょうねえ。
私もいつか描いてみたいです。
Commented by pallet-sorairo at 2017-06-17 09:38
ほんと、田村一村の絵だ!
田村一村は、いつぞや千葉市美術館まで展覧会を見に行き
すっかり魅せられた覚えがあります。
で、私はよく名前(名前からの性別も)を間違われるヒトなので
いつもはおおらか(^^;??なんですが、
こんな場合はちょっと一言余計なことを言ってしまいそう(^^;
特に相手がプロの編集者ならば、
反省しているのがわかっていても厳しいことを優しく言うのも愛情かなんて。
Commented by kotoko_s at 2017-06-17 14:37
☆そらいろさん
田中一村の原画をご覧になったのですね、いいですねえ!
生き方もですが、あの作品群には心惹きつけられます。

そらいろさんもお名前を間違えられやすいですか。
私もなんですよ、性別も^^
そうですね、おっしゃる通り、相手はプロの編集者ですものね。
実は、私はプロの編集者にえらく厳しくて、校正もれを見つけたりすると
「なんだ、プロのくせに」とかなり激しく非難してしまいます(心の中で)。
だから、この話を聞いてちょっとビックリしました、世の中にはこんな人もいるのか、と。
叱るのも愛情のうち、ということもありますね、たしかに。
Commented by stanislowski at 2017-06-19 04:37
うちのむすめは、「ママ、誤りは相手に言わないと学ばないよ」と言います。。。
Commented by kotoko_s at 2017-06-19 07:41
☆ stanislowskiさん
お嬢さんのおっしゃるとおり。
大人になってからって、叱られることがほとんどなくなってきますから、それだけ自覚していないと成長の機会が失われていくのかもしれませんね。
Commented by Yozakura at 2017-08-02 17:54 x
野ウサギ様
 書かれている内容に心当たりがあり、続けて投稿します。
 その、平身低頭して謝罪するプロの編集者に対し、「私はそういうことは、まるで気に成らないんですよ」と対応出来るとは、物凄く達観していますね。感嘆します。
 私は、そこまで人間が出来ていません。

 現に、この日のブログで引用されている画家・田中一村に就いて、私にはホロ苦い記憶があります。15年ほど前でしょうか、或る著名なコラムニストがネット上に毎日掲載・更新している自身の有名なブログに、その日本画家の氏名を引用して、画家の事績と才能を絶賛していました。
 ところが、あろうことか、その画家の名前が「中村一村」となっていたのです。
 その誤字が、誤表記が潜在的な動機付けとなったのか、そのコラムニストのブログが有料化されたのを契機に、私も何時の間にか、そのブログを読まなくなっていきました。矢張り、その有名ブログを書いているコラムニストの人格に、一抹の不安と疑念を抱いたからでしょう。

> 似たようなことを経験しているから、その気持ちはよくわかる。

 全く、御説の通りです。この私にも、思い出しただけでも顔が紅潮し、恥ずかしくなるような「中村一村」と同種の誤字や誤表記のミスが幾つも有ります。他人事(ひとごと)ではありません。
 でも、その必死に謝罪する編集者に泰然自若、「そういうことは、まるで気に成らないんですよ」と対応できるだけの度量は、ありません。この日のブログは、実に悩ましくも、そして意味深長な内容ですね。
 まぁ、個々人の人格とか度量の問題だと安易に総括出来るものではなく、社会全体の風潮や価値基準が問われる側面もあるからでしょう。人々の価値観が益々多様化し、複雑に錯綜している現代であるだけに却って一層、対応が難しくなっている気もします。
 いろいろと考えさせてくれますね、このブログは。お元気で。
Commented by kotoko_s at 2017-08-03 14:11
☆Yozakuraさん
人間なので誰しもうっかりミスはあるもの。でもやはり、それを生業としているプロの間違いは「おやおや」と思ってしまいますね。

私は昔、確認もれでミスし、上司と一緒に、先方に謝りに行ったことがあります。
帰り道、すっかりしょんぼりした私に上司が「こうやって、もう二度としない、と思うでしょう。でもね、またやるのよ」と言ってから、「私はそうだった」と笑ったのです。
幸いなことに、その後はその職場で同じ失敗はしませんでしたが、このときの上司の言葉は折に触れ思い出されます。
自分の過ちは許していただきたいけれど、相手の過ちを許すことは本当に難しい。
友人のこの話は、私にもいろいろなことを考えさせてくれました。
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by kotoko_s | 2017-06-14 16:29 | ある日 | Comments(12)

 あれこれ


by haru
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