お彼岸に織る

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世の中ではシルバーウィークとやらの大型連休だったが
行楽はさておき、お彼岸である。
それにこのお天気続き。
近所では仕事休みの若い人も帰ってきて、稲刈りに忙しい。
秋の日は短いので、晴れた日は貴重な「稼ぎ」日和です。

線香立ての来客を迎えるため、私もどこへも出かけなかった。
行事のメモをしたノートを開いて、毎年と同じようにハレの料理をする。
彼岸の入りには団子、稲荷寿司。棒鱈を煮て、エゴも練っておく。
中日は団子、きのこごはん、天ぷら。ゴーヤ、玉葱、人参、パプリカでかき揚げ。さつま芋。
畑からもぎたての枝豆も茹でる。どの野菜も自家製なのはなんという恵みでしょう。
26日の彼岸明けには、また団子を丸め、稲荷寿司や煮物をお供えする。
しかし。お稲荷さん、ってなんでだろ。バアの指令通りにしているけれども。

今年は22日が敬老の日だった。
成人の日もいつのまにか移動してしまったが
祝日って「その日」に意味があるんだよ。経済のために本来の意味が消えていく。
どんどん大雑把になっていくなあ。
この日は義母の好きなお赤飯を蒸かして
久しぶりに銀鱈を煮た。

この家に初めて挨拶に訪れたのは、2月の雪に埋れた寒い夜だった。
「なんにもないけど食べてください」
夫になる人の母は『標準語』でそう言って恥ずかしそうに笑った。
炬燵の上に用意された料理の中に、この銀鱈の煮付けがあった。
甘辛く、ほろほろと崩れる優しい味。
この魚が高価で、普段の食卓に上るものではないことを後に知った。
銀鱈を見ると、あの晩のことを思い出す。


さて。決まりごとをちゃんと済ませれば、あとは割と暇である。
機(はた)に座って、からむしのコースターを織った。
2年ぶりの機織りだ。
からむしはイラクサ科の宿根草。この茎から繊維を引き出し、糸にして織った布が「からむし織」。
その伝統工芸を教えていただいた土地からは離れたが
その頃に作業し引いた原麻(げんま―繊維)が手元にたくさん残っている。
からむしの繊維は、本来ならばごく細い糸に績(う)み、透き通るような布を織る。
気の遠くなるような時間をかけて生まれる美しいものは、彼の地に生きてこその仕事。
だから、私はここでできることをしようと思っている。



今回、織れたもの。10×11cmのコースターが35枚。
経糸(たていと)は麻。緯糸(よこいと)にからむしの繊維を織り込んだ。
実物はもっとはっきりこっくりした色合い。
栗のイガ、クルミの果皮、クサギのガク、からむしの葉などで染めて。



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1枚ずつ袋に入れ、やさしいことばを添えて
お嫁に出します。
織っている時間がとてもとても幸せでした。



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Commented by fusk-en25 at 2015-09-24 03:47
栗、胡桃、くさぎ、からむしの色合いでこうなるのですね。
kotoko_sが織っている側にいたいな。。。。
見ていたい。。。
Commented by kotoko_s at 2015-09-24 09:33
☆fuskさん
光が弱くてぼけぼけの写真ですね^^;特に黄色が出なくて残念。
クサギ(臭木)は小さな実をたくさん集めてとてもきれいな青を染めるのですが、それはもう手元に残っていなくて。
栗やクルミで茶系、クサギのガクで銀鼠、からむしは黄色。
自然界の色や植物に触れていると気持が落ち着きます。

そういえば、織っているときはひとりですね。
なんとかの恩返ししてるわけじゃないんですが^^
Commented by saheizi-inokori at 2015-09-24 10:43
人類の文化遺産がそのまま!^^。
素晴らしいです。
Commented at 2015-09-24 16:11
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kotoko_s at 2015-09-25 10:02
☆佐平次さん
『ハーメルン』の村では今年も美しいからむしが育ちました。
憧れを胸に、ぶきっちょなことを続けております^^
Commented by kotoko_s at 2015-09-25 10:18
☆鍵コメさん
そうですよねえ、本家のからむし織は大変高価なものですね。
夏にしか着られないからむしの着物。その原料の栽培と織りが雪深い山村で受け継がれてきたことに感動します。
短い真夏の一時期にしか見られないお引きの作業もご覧いただけて嬉しいです。引いたばかりの原麻(げんま―繊維)が並んで干されている様もそれは美しいものです。
ぜひまたお訪ねくださいね!こちらはみんな元気ですよ^^

かつて心づくしのご馳走でもてなしてくれた義母に、こうして同じものを作ってささやかな敬老のお祝いができたことに、しみじみとした気持になりました。感謝しています。
Commented by hanamomo08 at 2015-09-26 00:58
また美しいものを見せていただきました。
お彼岸になってまた『会津』の記事、ゆっくりと読ませていただいておりました。
>団子、きのこごはん、天ぷら。ゴーヤ、玉葱、人参、パプリカでかき揚げ。さつま芋。
のところも読んで、がんばっているだろうなあ~と。

初めて訪問した日のこと そうだったんですね。
お義母さんの心からのおもてなしだったんですね。
いいお話を聞かせていただきました。

35枚のコースター、届けられた人は嬉しいでしょうね。
今日薬局からの帰り、花の終わったクサギを見つけたのですが、実がなかったのです。
実らなかったのでしょうね。
Commented at 2015-09-26 07:23
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kotoko_s at 2015-09-28 19:59
☆momoさん
お彼岸も過ぎてまもなく10月。早いものですね。
お中日の美しいおはぎ、拝見しておりました。
私も挑戦したことはあるのですが、あんこを上手につけられなくて。センスがないんですよ^^;
ハレの日の料理はほとんど決まりごとのようなもので、料理の腕のない私はかえって気が楽ですが、義母の味には追いつけません。
土地の料理、さらにその家の味というものはいいものですね。
私はここに嫁いだことで馴染んだ味とは違う世界を知ることができてよかったと思います。
「和食」といっても日本中が同じ味で作っているわけではないですものね。

からむしのコースターは私の中である意味をもっています。
ささやかなライフワーク的なものでしょうか。
クサギの実がなかったですか。こちらはどうかな、見てみましょう。
Commented by kotoko_s at 2015-09-28 20:12
☆鍵コメさん
からむしは夏の空に向かって伸びる青い草。
何か迷っているようなとき、あのまっすぐな清々しい姿を思い出すと、すっと気持が整うようです。
織りっていいものですねえ。一段、また一段と目の前に自分の手のあとがあらわれる。
それがまた気持を励まして次へと運んでくれるようです。
ま、私のは「ナンチャッテからむし」ですけど^^;本家の織りはまったく別物なので。

銀鱈の話。何度思い出しても、そのたびになんだか泣きたくなってしまって。

そうですね、そのお仕事は―いくら安全と言われても、ね。
私もそういう体験をしたらやっぱりダメだろうなあ^^
Commented by sakura-saku-tiru at 2015-09-29 21:54
銀鱈は、子どものころ、よっばら食べました。
と、いうことは、昔は廉価だったのです。

あとは、ムキサメね。
これは、臭くて苦手だった。

銀鱈は昔からずっと好きです。
よっばらにらなりません。
(よっぱらとは、もうたくさん、ということ)

いなり寿司は?
運動会ぐらいかな?

手仕事、美しいです。
実物を見たい。
Commented by kotoko_s at 2015-09-30 22:36
☆さくらさん
そうなんですか、銀鱈、昔は日常の食卓にのぼるものだったのですね。
こちらではそういう話を聞かないので、もしかしたら山国の会津では昔も高価だったのかも。
ムキサメはこちらで初めて食べました。なんというか頼りないような食感ですね^^;
こちらでも「よっぱら」って言いますよ。銀鱈は脂がのっていて美味しいですよね。
稲荷寿司のこと、バアは「あぶらげまんま」と言うのですが、あれは仏さまというより神様なのでは^^
多分、油揚げもご馳走なのかな。

皆さんに拙い手仕事を褒めていただいて嬉しいです。
励みになります(^^*
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by kotoko_s | 2015-09-23 23:29 | 作る | Comments(12)

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