なんでもないこと

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もうすんだとすれば    まど・みちお 

もうすんだとすれば これからなのだ
あんらくなことが 苦しいのだ
暗いからこそ 明るいのだ
なんにも無いから すべてが有るのだ
見ているのは 見ていないのだ
分かっているのは 分かっていないのだ
押されているので 押しているのだ
落ちていきながら 昇っていくのだ
遅れすぎて 進んでいるのだ

一緒にいるときは ひとりぼっちなのだ
やかましいから 静かなのだ
黙っている方が しゃべっているのだ
笑っているだけ 泣いているのだ
ほめていたら けなしているのだ
うそつきは まあ正直者だ
おくびょう者ほど 勇ましいのだ
利口にかぎって バカなのだ
生まれてくることは 死んでいくことだ
なんでもないことが 大変なことなのだ


          *


母の誕生日が近いので電話をする。
あのさ。お花ぐらいは送ってもいいかしら。
「いいわよー花は消えるから。あなたのカードもいいわー」
カードもいつかは消えるからね。
もうこれ以上モノは要らない、というのは実家に行くたびによくわかる。
このごろの帰省はその荷物を片付けることにほとんど費やされるが
まだ多少なりとも動ける両親と一緒に
思い出の数々をいちいち開いて手をとめるのは恵まれた時間だろう。

まど・みちおさんが童謡以外の場所で書かれた詩は特に
あるがままという在り方が、ひとつではないことを伝えてくれる。
まどさんの言葉はほっとする、安らぐというひとも多いが
むしろ私は勇気が湧いてくる。
勝手に袋小路に入り込んでしまったときなども
(そら、あなたのわき腹に新しい抜け道が)
などといたずらっぽく教えてくれるような詩人だ。


「生まれてくることは 死んでいくことだ
 なんでもないことが 大変なことなのだ」


最近の母の口ぐせでもある。
いずれは何もかも消えてしまうのに(から)
なにか手渡したい、不思議。
生きていることの、不思議。





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Commented by saheizi-inokori at 2015-06-03 10:09
だからこそ、
>年ごとの春に萌えだす木の芽は年ごとにあらたに我らを驚かすべきであったであろう。
「銀の匙」で中勘助が言ってます。
お母さんの誕生日もあらたに驚くべきことの最たることですね。
Commented by hanamomo06 at 2015-06-03 18:09
いい詩ですね。
お母様、私と同じ6月生まれでしたか。
こんな素敵なカードをもらえるお母様は世界一幸せでしょう。
そして、心をこめてこれを送ろうとする娘さんも幸せでしょう。
母と一緒に暮らしていて、いったいどれだけ母をわかってあげられるのだろうと立ち止まる時があります。
日々、いろんな話しをしても私の中に残っているのはどれくらいなのか、どれだけ覚えているのか、不安に思うこともあるのです。
>いずれは何もかも消えてしまうのに(から)
なにか手渡したい、不思議。
生きていることの、不思議。
そうですね、今を大切にしたいと思いました。
お母様、お誕生日おめでとうございます。
Commented by kotoko_s at 2015-06-04 10:55
☆佐平次さん
そうですか、「銀の匙」に(すっかり忘却の彼方でした^^)。
老母の誕生日は、まさに驚くべきことなのですよね。
時々ふと、母のいないことを想像するようになりました。
Commented by kotoko_s at 2015-06-04 11:22
☆momoさん
こんなふうに下手な絵を喜んで待っていてくれるのは、母だからこそですね。
母はジャム作りが得意なのですが、ビンのラベルはいつも娘をあてにしています^^

実の親子であっても、互いの心の奥のことはわからないものですよね。
でも、わかってあげたい、わかりたいと願う気持の強さは、実の親子だからこそと思います。
momoさんもお母様もお幸せですね。
私など、もし実際に一緒に暮らしたら、すぐ家を飛び出してしまいそうですよ。

momoさんも6月生まれですね。おめでとうございます(^^*
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by kotoko_s | 2015-06-03 09:33 | 読む | Comments(4)

 あれこれ


by haru
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